東京都水素モビリティ・ステーション普及加速化総合支援事業

アクロストランスポート株式会社様

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自社・親会社・荷主企業。3者の期待と戦略が合致し結実したFCVの利活用。

株式会社アクロストランスポート

営業本部長/常務取締役 村松重孝様
安全推進部 自動車管理課 課長 水野浩己様

アパレル業界は、かねてから環境問題や事業の持続可能性を重んじ、SDGsをはじめとするさまざまな社会課題の解決に積極的に取り組んできました。その潮流を受け、いち早く脱炭素へと舵を切ったのが、アパレル物流を専門領域とするアクロストランスポート社です。環境対応車両への入れ替えを拡げ、2023年にはEV(電気自動車)を配備。24年にはFCV(燃料電池自動車)の導入に踏み切りました。

POINT
  • 物流分野にも広がる持続可能性と脱炭素の潮流を背景に、物流DXを積極的に推進
  • 他社に先駆け、環境配慮型車両の配備拡大とFCVの運用に挑戦
  • 環境配慮は社会的な重要課題。FCV導入を新たなビジネスチャンス創出へ

環境意識に敏感なアパレル業界を支える、
保管・荷役・流通加工に特化した物流企業

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右から 営業本部長/常務取締役 村松重孝様、安全推進部 自動車管理課 課長 水野浩己様

アクロストランスポート社は、もともと某総合アパレルメーカーの物流子会社として1972年に創業した老舗企業です。北は北海道から南は九州まで、全国23ヵ所におよぶ配送センターや事業所を有し、多彩なファッションブランドの生産拠点から、百貨店、ショッピングセンター、駅ビルなどへのアパレル輸送を行っています。

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村松常務「2016年、当社はセンコーグループホールディングスの一員となりました。従業員数は当社単体で約1,100名、グループ全体では2万6,000名を超えています。売上高もグループ全体で約8,500億円に達し、来年度には1兆円を突破する見込みです。

現在、当社は物流サービスの多様化を進めていますが、なかでも大きな特色は〝アパレルハンガー輸送〟を強みとしている点です。一般的なトラック輸送がケース品やパレット品を中心としているのに対し、当社のトラック荷室には衣類を掛けるハンガー設備を備えており、繊細な商品の輸送を可能にしています。衣料に特化した配送は、物流分野でも珍しい存在といえるかもしれません」

また同社は、商品の輸送や保管にとどまらず、タグ付け・値付け・プレス・ラッピング・検品・検針・X線検査・補修など、アパレル製品に特化した 流通加工およびQC(品質管理)業務を幅広く手がけている点も大きな強みとなっています。

村松常務「さらに、DXの取組も積極的に進めています。荷主であるアパレル企業の皆さまの間では、バーコードに代わる非接触型ICタグ(RFID)の活用が広がっています。それに合わせて、当社でもRFIDを活用した物流システムを導入し、加えて各種ロボットやマテハン機器を取り入れることで、物流現場の機械化・自動化を推進しています。これにより生産性の向上はもちろん、精度とスピードの両立を実現しています」

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ハンガーバーは細かな調整が可能
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衣料の配送に適したアパレルハンガー輸送

水野課長「当社の車両はすべてハンガー仕様となっており、工場で生産されたアパレル商品を一度も段ボールに梱包することなく、そのまま店頭までお届けします。そのため、商品に畳みシワが付くことがなく、店舗では届いた瞬間から売り場へ並べることが可能です」

FCV導入への道筋
そのきっかけは時代の要請

こうした物流DXの推進に積極的な同社は、荷物を運ぶ輸送手段にも環境配慮型車両の導入を進めてきました。まずは、低燃費・低CO2排出のディーゼル車への転換が進み、その流れはEV、さらにはFCVへと発展していったといいます。

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村松常務「FCVの導入は2年前のことで、これは当社だけでなくセンコーグループ全体としても初の取組でした。私たちの主要顧客であるアパレル業界は、環境負荷の低減や労働環境の改善といった課題に対する意識が非常に高く、物流部門にも持続可能性の徹底や脱炭素化が強く求められていました。

一方で、FCVの導入はコスト面で大きな負担を伴います。しかし、グループとしては他社に先駆けて実運用の実績を積み重ねたいという強い思いがありました。こうした背景のもと、当社・親会社・荷主企業の三者が同じ方向性を共有できたことが、導入を決断する大きな要因となりました。」

ファッションは、その時々の流行(トレンド)や感性を映し出す鏡です。環境や社会に配慮した製品づくりは、今や消費者の購買意欲を左右する重要な要素であり、ブランドイメージの形成にも大きな影響を及ぼします。


村松常務は、「だからこそ、環境配慮型車両の導入がこれまで以上に価値を持つようになっている」と語ります。

こうした背景のもと、同社では今春、2台目となるFCVの納入が予定されています。

水野課長「FCVにはさまざまなメリットがあります。モーター駆動ならではの滑らかな乗り心地や、待機中のアイドリング音の低減といった点は、EVと大きく変わりません。一方で、約260kmという長い走行距離を確保できることは大きな強みです。また、EVのように頻繁な〝充電待ち〟が発生しにくく、水素充填が比較的短時間で完了するため、配車計画の自由度が高まる点も利点と言えます」

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村松常務「なにより荷主さんとともに社会に貢献しているんだという姿勢をアピールできる点が大きいですね。導入コストも行政の手厚い補助が受けられるため、実はそれほど高いハードルとはなりません。とりわけ東京都は、水素社会実現に向けた仕組みづくりを整備されていて、通常車両の入れ替えとほぼ同等のコストに抑えられるよう補助金制度が設計されています。これによって私たちの負担が大幅に軽減されました。燃料の水素についても支援や補助をいただいています」

補助金申請にあたって、手続き面はいかがでしたか。

村松常務「申請についてはまったく問題ありませんよ。この取組に関していえば、Commercial Japan Partnership Technologies株式会社※1 がサポートをしてくれます。それよりもFCVの導入は新たなビジネスチャンスの創出につながるのではないかと考えているんです。当社が水素モビリティのお話をすると、たいていのお客様が関心を持って耳を傾けてくださいます。環境問題に意識が高い企業ほど、私たちが想像していた以上に刺さるんです。特に外資系企業の皆さんは水素への期待度が強いように感じます」

水素エネルギー活用を積極推進している国は、韓国、北米、欧州など。カーボンニュートラル達成に向けたエネルギーミックスを担う重要要素として水素が注目されて以降、世界各国ではその普及や投資、研究開発が強化されています。

村松常務「彼らの目には水素という選択肢が新鮮に映るのでしょう。そういった状況を味方につければ、新たなロジスティクスの需要機会を掘り起こせると思います」

見えてきた課題と希望
次のフェーズに期待することとは?

一方、気になるのは導入後の運用です。燃料を車両に充填する水素ステーションについてもお話を伺いました。

水野課長「水素ステーションは湾岸エリアに多く点在しています。弊社の拠点は江東区新木場ですので、ステーションまでの距離が近く非常に助かっています。ただ、一般的なガソリンスタンドを利用するように遠い配達先での給油や、24時間給油できるわけではありません。グリーンイノベーション基金事業(※)における実証では、当社の第1ステーションは豊洲、第2ステーションは有明と設定されていて、原則的に充填スケジュールもあらかじめ決められています」

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水素タンクの分、荷台が高め
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ここから水素を充填

村松常務「東京の場合は、地方に比べステーションも多く、また特定のステーションに利用が集中しない工夫があり、FCVを運用する側にとってありがたいことです。一方で、物流は24時間止まることが許されない社会インフラの中核を担っています。FCVは電気自動車に比べて燃料補給がスピーディに済むとはいえ、より安定した運用のためには、今後さらにステーションの設置や拡充が進むことを期待しています」

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街でも目を引く、水素をイメージしたクリーンなデザイン
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こどもミュージアムプロジェクトの一環で、社員のお子さんの絵をラッピング。

前述した航続距離の問題、より多くの荷物を運搬できる大型車両の開発、効率的な幹線輸送を叶えるため発着地双方での取組が必要になるなど、第1号車による実証実験を通して、いくつかの課題も見えてきました。それでも同社は、水素モビリティの運用に果敢に挑戦しながら、東京都が掲げる水素社会の実現・実装に少しでも貢献していきたいといいます。

村松常務「とにかく物流が滞ってしまうと世の中は回りません。AIがいかに発達しようがこれだけはなくならないでしょう。だとすれば、未来につながるチャレンジは止められません。東京発となる水素エネルギーの模範的・理想的な利活用のカタチを国内外へ広く発信していくこと。それによって同じ理念を共有する企業を続々と増やしていくこと。これらが水素モビリティの普及を加速させるカギになるのではないでしょうか」

企業プロフィール

会社名
アクロストランスポート株式会社
所在地
東京都江東区新木場2-14-11
事業内容
アパレル業界を中心に、輸送、倉庫保管、物流資材販売、レンタル事業など
従業員数
1,100名
取材撮影
2026年1月
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