日本通運株式会社様

プロジェクトの実施で見えてきた水素モビの可能性。
航続距離の長さと充填時間の短さにFCVの勝機あり。
日本通運株式会社
安全・品質・業務推進部 専任部長 飯田 忠孝様
課長 八重樫 理様
国内航空貨物第一営業部
カスタマーサービス課長 本木 省吾様
スーパーバイザー 中村 将樹様
物流大手のNIPPON EXPRESSホールディングスは、これまでにハイブリッド車やEVトラックなど12,000台以上の環境配慮型車両を導入し、気候変動対策を進めてきました。取組の一環として、2023年にはNXグループの中核をなす日本通運株式会社がFCV(燃料電池自動車)を20台導入。そのうちの1台が稼働する、日本通運羽田京浜島航空貨物センターを訪ねてお話を伺いました。
- 羽田の航空貨物物流を支える戦略的なFCV運用
- 現場ドライバーが語るFCVの快適性と実用力の真価
- プロジェクトを通じ、脱炭素と企業価値向上を同時に実現
FCVの航続距離を活かして、
羽田着の航空貨物を都内5ヵ所に配送

国内航空貨物第一営業部 カスタマーサービス課長 本木 省吾様、スーパーバイザー 中村 将樹様
国内トップクラスの物流企業である日本通運は、陸海空の多様な手段を組み合わせた最適なソリューションで輸送サービスを提供しており、全国に2,000を超える流通拠点を展開。なかでも首都東京の空の玄関口である羽田空港周辺には数多くの事業所があり、NXグループのフレッシュグリーンのロゴをそこかしこで見かけます。現在FCVが稼働する羽田京浜島航空貨物センターも、羽田空港のすぐ隣の京浜島にあります。

まずは京浜島がある臨海部の立地と同センターの役割について、安全・品質・業務推進部専任部長の飯田忠孝さんに伺いました。
飯田さん「5大港といわれる日本の主要港を中心に拠点がありますが、この羽田エリアは港湾と空港のほかに鉄道のコンテナ基地もあります。全国に展開する日本通運としても、陸、海、空が揃った特別なエリアといえるでしょう。こうした立地をいかし、羽田空港と関東甲信越地方を結ぶ国内航空貨物の中継ターミナルとして、航空輸送とトラック輸送を繋ぐハブの役割を果たしているのがこちらのセンターです」

FCVの利活用にあたっては、燃料となる水素充填のインフラ環境が前提となります。その点、臨海エリアは水素ステーションの数が比較的に多く、燃料を安定供給できる環境です。ただし、FCVの導入にあたってはさまざまな条件があり、同センターにFCVを配置した理由は他にもあると、課長の八重樫理さんは話します。

八重樫さん「ステーションの設置状況も重要ですが、FC小型トラックの航続距離が実質250km~280kmぐらいですので、事業所の営業範囲によっても導入できるか否かが決まります。このセンターでは、羽田に届いた航空貨物を港区、品川区、大田区、世田谷区、目黒区のお客様へ運ぶのがメインの仕事です。この他、近県までスポット輸送することもありますが、いずれも中距離から近距離の配送ですので、走行距離はだいたい150km。このセンターの業務であれば、FCVでも余裕を持って運行できると判断しました」
FCVトラックの乗り心地と利便性
現場のドライバーはどう感じている?

水素ステーションでの燃料供給も含め、実際、FCVを走らせるにあたって不都合はないのか、国内貨物第一営業部の管理者の本木省吾さんとドライバーとしてハンドルを握る中村将樹さんに伺ってみました。
中村さん「この近くに商用車向けの大規模ステーションが3ヵ所あるので、業務終わり、もしくは翌朝の業務開始時に水素を充填しています。当センターへ配備しているFCVの場合はフル充填しても時間は5分程度ですし、業務への支障は感じないですね。最近は商用FCVが増えてステーションが混むこともありますが、その時は他へ行けばいいので不便は感じていません」
こうした柔軟な運用を支えているのが、セルフ式の水素充填です。セルフ式とは、ドライバー自身が水素充填できるシステムのこと。指定の講習を受け、ステーション事業者と契約した利用者が、利用できます。中村さんはその要件を満たしているため、ガソリンスタンドと同じように、ご自身で水素充填の作業ができる、というわけです。

一方、FCVの乗り心地についてはどうなのか、本木さんに伺いました。

本木さん「静かですし、乗り心地は最高です。パワーもありますね。かなり多くの荷物を積んでもキビキビと走ってくれて、ディーゼルに比べて格段にパワーがあるのを感じます。FCEVと書かれたボディをみたお客様から、『水素で走っているの?すごいね』とお褒めの言葉をいただくことも多く、温暖化対策に貢献している実感もあり、ドライバーも誇りに感じていると思います」
このようにFCVの利活用では企業のイメージアップが期待される一方で、サプライチェーン全体の脱炭素化を目指す企業からは、Scope3における輸送・配送時のCO2削減策として、FCVなど環境配慮型車両の利用を求められることも考えられます。
八重樫さん「導入当初はさほどなかったのですが、昨年ぐらいから要望が増えていると感じます。航空貨物を扱う関係から海外のお客様も多く、環境基準の厳しい外資系のお客様からは、カーボンニュートラルに対応した車両を、というご要望をいただくことも。ただし、現在はプロジェクト実施の段階で車両そのものの数が少なく、FCVの航続距離の問題もあり、お客様が要望される輸送内容にマッチさせるのが難しいという現状です。今後、他地域にもステーションが増えていけば、対応できるようになるのではと期待しています」
FCVの運行データを蓄積して、
スマートモビリティ社会の構築を目指す
日本通運が参画しているプロジェクトとは、2050年のカーボンニュートラル目標に向けたグリーンイノベーション基金事業(※)の一つで、スマートモビリティ社会の構築を目指してスタートしました。商用EV、FCVの本格普及を見据えて、運行管理と一体的なエネルギーマネジメントの検証を行っていて、さまざまな運輸事業者が参画しています。
※ グリーンイノベーション基金事業
2050年のカーボンニュートラル実現に向け、経済産業省とNEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)が運営する脱炭素化と経済成長の両立を図る官民連携プログラム。研究開発から社会実装まで最長10年間、継続的な支援を行い、目標達成に応じたインセンティブ措置など、実効性の高い基金運営が行われています。
参照:グリーンイノベーション基金事業特設サイト
https://green-innovation.nedo.go.jp

飯田さん「日本通運では事業用として車両を使いながら、運行状況やエネルギー利用に関するデータなどを収集しています。プロジェクトの期間は7年。その間、さまざまな事業者によって蓄積されたデータをもとに、水素インフラの最適な配置を図りながら、運輸事業者とステーション事業者がうまく共生できるよう、エネルギーマネジメントシステムの構築が検討されるということになります」
プロジェクト実施にあたり、日本通運は20台のFCVを複数の事業所に分散して配置。こちらのセンターのように航空貨物の集配拠点もあれば、引越・移転に対応する事業所もあります。


飯田さん「例えば、FCVで試験問題の輸送を行うこともあれば、建築廃材を入れたボックスを回収する事業所もあります。集配場所は都内のいたる所にあり、その都度で場所も変わりますので、日々計画を立てて運行しています。ルート配送を主とする物流企業とは異なり、さまざまな条件下のデータを供出できるのは私たち日本通運ぐらいかもしれません。そういう意味では、プロジェクトに対する貢献度も大きいといえます」
FCVの導入から2年が経ち、事業所ごとのデータが蓄積されるなか、商用車として活用するための課題や可能性も見えてきました。

八重樫さん「現在、FCVは7、8か所に分けて導入していますが、配備しているのはこの羽田エリアを含め、江東区、江戸川区の湾岸エリアなど、どこも臨海部にある事業所なのです。なぜかといえば、トラック等の商用車を受け入れられるステーションは、東京都の臨海部に集中しているからです。内陸部にも商用車対応のステーションが増えれば、FCVなら経路充填が可能ですので、遠距離輸送の需要にも応えられると考えています」

最後に、FCVの導入を検討される企業の皆様に向けてメッセージをいただきました。
飯田さん「日本通運の他にもプロジェクトには多くの企業が参画して、スマートモビリティ社会構築を目指して、いろいろなデータやノウハウを蓄積しているところです。プロジェクトで得られたデータにより需給バランスのとれたエネルギーマネジメント・システムの構築が進み、FCVの導入を検討される企業様が少しでも増えることを願っています。FCVは静かな乗り心地がドライバーに評判ですし、環境に配慮した取組としてお客様からは高い評価を得られ、導入を検討する価値は十分にあると思っています。国と東京都による手厚い支援策や補助金がある今はコストの持ち出しも少なく、先駆的な取組としてアピールできるタイミングでもあります。FCVが当たり前になってからでは遅いのです。導入を検討されているなら、いまこの機会を逃さず、まずは一歩を踏み出してはいかがでしょうか」
企業プロフィール
- 会社名
- 日本通運株式会社
- 所在地
- 東京都千代田区神田和泉町2番地
- 事業内容
- 物流事業全般、および関連事業
- 従業員数
- 31,451名
- 取材撮影
- 2026年1月