東京都水素モビリティ・ステーション普及加速化総合支援事業

岩谷コスモ水素ステーション合同会社様

_T7A0361

水素社会実現を支えるインフラの要。
〝止まらないステーション〟を目指す強い想い。

岩谷コスモ水素ステーション合同会社

岩谷コスモ水素ステーション合同会社

水素モビリティの普及には、燃料充填拠点となる「水素ステーション」の存在が欠かせません。現在、東京都内に20ヵ所・30基ある水素ステーションのうち、複数拠点を建設・運営されているのが岩谷コスモ水素ステーションです。今回は最新鋭の設備を備える同社の水素ステーションを訪れ、代表の喜村さんに、開所に至った経緯や稼働状況を伺ってみました。

POINT
  • 水素社会実現を支える重要な拠点整備
  • 物流と交通を止めない供給体制の構築
  • 商用FCV普及を加速する基盤づくり

日本のエネルギー問題を明るく照らす
エネルギー〝水素〟の要となる供給拠点

岩谷コスモ水素ステーション合同会社インタビュー
代表職務執行者 喜村 博様

社名に掲げられた〝岩谷〟と〝コスモ〟の文字。それらは、この合同会社が「岩谷産業」と「コスモ石油」のパートナーシップによる企業であることを物語っています。

国内屈指の2つのエネルギー企業がともに手を携えたきっかけは、遡ること2022年2月。両社は水素事業の協業において基本合意を取り交わし、FC(燃料電池)商用車をターゲットにした水素ステーションの建設・運営に乗り出しました。

喜村さん「岩谷産業とコスモ石油は、これまでもさまざまな場面で良好な関係性を築き、液化ガスや石油といった分野でエネルギーの安定供給に努めてきました。岩谷産業はすでに全国で50数ヵ所におよぶ水素ステーションを整備してきた実績があります。一方、コスモ石油は国内津々浦々に約2,500ヵ所のガソリンスタンドを有し、多様な運営ノウハウが蓄積されているとともに、用地取得に関しても大きな強みを持っています


  互いのストロングポイントを持ち寄って設立された新会社は、2024年4月に岩谷コスモ水素ステーション平和島を開所。その翌年の25年4月には、ここ有明に新たな水素ステーション岩谷コスモ水素ステーション有明自動車営業所をオープンさせました。

岩谷コスモ水素ステーション合同会社インタビュー

喜村さん「まずは平和島にある水素ステーションからご説明しましょう。平和島には物流基地となる巨大なトラックターミナルがあり、私たちの水素ステーションはその内部に設けられています。つまり、水素充填に訪れるメインのお客様は商用のFCトラックということになりますね。国内初の商用水素ステーションは2014年に兵庫県尼崎市に生まれましたが、当初はトヨタ自動車さんが開発した乗用車タイプのFCVである〝MIRAI〟の利用を想定して、水素ディスペンサーが1基の小規模なステーションが一般的でした。しかし、水素ステーションには必ず定期的なメンテナンスが入るため、どうしても休業日ができてしまう。物流を支えるトラックを止めてはいけません。そこで、私たちは2ライン(ディスペンサー2基設置)体制を基本方針とし、不意のトラブルが生じてもバックアップを維持するという考えのもとで、同施設を設計しました」

岩谷コスモ平和島ステーション
平和島ステーションの外観 (写真提供:岩谷コスモ水素ステーション合同会社)

実稼働から1年以上が経った平和島のステーションには、日々40台前後の水素モビリティがやってくるといいます。最近ではFCトラックのみならず、多様なFCVが水素充填に訪れるようにもなりました。

喜村さん「営業時間は8時から20時まで。朝は物流企業のトラックが列をなし、日中は近隣営業所のバス、夕方には配送を終えたトラックが再びやってきます。他にも、一般のお客様や、FCタクシーの需要も増えており、直近ではFC大型トラックの利用について打診されています。また、東京都では、2030年度までに約5,000台の燃料電池商用車の導入目標を掲げています。そうした多様なニーズにお応えするため、現在は営業時間を24時間に拡大する検討段階に入っています。法律で義務付けられた、年に一度の年次点検(平和島は2日間のみ休業)以外は年中無休ということになりますね。中長期的にはFC大型トラックを含め、1日70台程度の充填達成を目標に据えています」

2基のディスペンサーの奥には水素タンク、気化器、圧縮機、高圧蓄圧機を設置
岩谷コスモ水素ステーション合同会社
水素充填のディスペンサー

湾岸エリアを走るFCバスの補給基地
最新鋭の設備を持つ有明ステーション

岩谷コスモ水素ステーション合同会社インタビュー

喜村さん「かたや、ここ有明の新ステーションは、東京都交通局の有明自動車営業所内に整備されています。東京都の公募事業として始まったもので、条件として1日25両の都営バスへの燃料充填が求められていました。そこで私たちは各ベンダーさんのご協力のもとで最先端の技術を投下し、1時間でFCバス8両分の水素充填が可能なステーションを完成させました。必須供給台数の25両をはるかに上回るスペックを備えています。これには、水素モビリティの普及や水素社会実現を推し進める、都や国の政策の大転換が前提にあります」

喜村さんが指摘してくださったのは、商用FCVの需要や利活用を伸ばすことが、ひいては水素モビリティの浸透につながるということです。現在、経済産業省は、東京、福島、神奈川、愛知、兵庫、福岡の6都県をFC商用車導入促進の重点地域に定め、先行需要の創出を目指しています。

岩谷コスモ水素ステーション合同会社
水素充填中の都営バス

喜村さん「また、都バスだけでなく、民間のバス会社でも東京の港湾地域を中心にFCバスを走らせています。我々の役割としては、そうしたお客様に水素燃料の安定供給を図ることです。物流におけるトラックと同様、都民や観光客の足となるバスの運行を決して止めてはいけないという強い思いで取り組んでいます

岩谷コスモ水素ステーション合同会社
有明自動車営業所内ステーションでは、2両同時の充填が可能

水素の需要は今後も確実に増大していくと語る喜村さん。利用者の急激な増加を見越して作られたという同ステーションの先進性をまとめると、以下の通りとなります。

2ライン体制で大容量供給が可能
● 供給方式は液化水素ポンプをメインライン、サブラインに圧縮水素コンプレッサーを採用。片方にトラブルが生じたり点検がある場合でも、もう片方で充填が継続できる安心の2系統設計
液化水素ポンプは最新機器を導入し、水素圧縮の効率化を担保。
● 一般的には海外製のポンプが使われるが、有明のステーションは三菱重工製の国産第1号ポンプを採用。万が一のトラブルに備え1万回以上におよぶテストを繰り返した信頼性の高いシステム

岩谷コスモ水素ステーション合同会社
何重ものチェック体制のもとで、セルフ式でも安全な水素供給を実現

喜村さん「先ほど、6つの重点地域で商用FC利用に舵を切る大転換があったと申し上げました。これが水素社会の実現へのパラダイムシフトとなるかもしれません。それには質と数の両面から水素ステーションの充実を図らなければならないと考えています。現在、江東区新砂でも、新たな水素ステーションの建設計画が進められています」

インフラ整備は確実な安全性の確保とともに

また、同社が最も意を注いでいるのは、とことん突き詰めた〝安全性〟です。およそ30項目におよぶ毎日の点検、さらに厳しいチェックの目が注がれる月次点検、法令に基づいた年次点検。それらを通して想定される不安要素を徹底的に排除。加えて、ベンダー企業が遠隔モニタリングを行い、些細な異常さえも見落とさず検知し、効果的なメンテナンスに橋渡しをするなど、スタッフによる厳格な保安監督と、20以上にのぼる各種センサーの見守り機能によって、事故を未然に防ぐ工夫が幾重にも施されています。

岩谷コスモ水素ステーション合同会社
モニターと目視でステーションの安全を厳しくチェック
岩谷コスモ水素ステーション合同会社
堅牢で重い水素用のノズルはワイヤーで落下を防止

喜村さん水素というエネルギーは、私たちが従来から扱ってきた化石燃料と一緒で、使い方さえ誤らなければとても安全かつ安心なエネルギーなんですよ。安全面に関して生じる誤解を払拭していくことが、利用者の皆さんの『これなら安心だね』につながり、水素モビリティの普及拡大に貢献すると思うのです。お客様の声には常に耳を傾けていますが、それがここ1〜2年の手応えとして感じられますね」

岩谷コスモ水素ステーション合同会社
タッチパネルでのシンプル操作で、セルフでの水素充填を行う。初回利用の手続きもここから登録

喜村さんのお話によれば、自社の運営スタッフはもとより、同ステーションの運営に深く携わり、さまざまな場面を支えてくださる各ベンダー企業の皆さんも「自分たちのせいで供給を滞らせることがあってはならない」と強く感じていらっしゃるのだそうです。そういった関係者一人ひとりの妥協のない安全意識がこの施設を守り続けています。

岩谷コスモ水素ステーション合同会社
水素で冷えたノズルにつく水分は、タオルでふき取って錆防止
ガソリンや軽油とは異なり、充填量はkg、圧力と温度も表示

喜村さん「アメリカでは古くからガソリンの給油はセルフ方式でした。日本でもセルフ給油が導入された際、巷ではそれを不安視する声もあがりましたが、もはや日常となっています。やがては水素ステーションにおいても、それが当たり前になっていくんじゃないでしょうか。水素エネルギーが今以上に、私たちの社会生活に浸透していくことを願ってやみません」

企業プロフィール

会社名
岩谷コスモ水素ステーション合同会社
所在地
本社:東京都中央区京橋1-7-1
岩谷コスモ水素ステーション有明自動車営業所:東京都江東区有明3-9-25
事業内容
FC商用車向け水素ステーションの建設と運営
従業員数
7名
取材撮影
2026年2月

おすすめ記事