東京都交通局様

国内事業者で最大規模の保有台数と実績。
FCバスを積極導入する東京都交通局の取組とは?
東京都交通局
自動車部 車両課長 横山 幹夫様
自動車部 ZEV化推進担当課長 石田 徹様
「ゼロエミッション東京」の実現に向けて、バイオ燃料の活用、駅やバス営業所の省エネ化を推進する東京都交通局。とりわけFCバスの導入台数は国内最大規模にのぼり、環境負荷の低減に大きな期待が寄せられています。そこで今回は、都営バスのFC化を進めるおふたりに、現在の稼働状況と今後の水素の社会実装における展望を伺いました。
- 国内最大規模のFCバス導入で環境負荷軽減を牽引
- 営業所内へ水素ステーション整備で運行効率と利便性向上
- 車両性能の進化と技術革新を原動力に、世界に誇る水素社会の実現へ
水素エネルギーは選択肢の一つ
しかし、その可能性は無限大

日本初となる市販型FCバスの営業運行のスタートは2016年度に遡ります。舞台は東京。当時はたった2両の「都営バス」からのスタートでした。それが今や民間事業者も含めた東京全体のFCバス走行台数は135両(2024年度末時点)に増加し、うち都バスの保有台数は現在87両(2026年2月末時点)にまで拡大を遂げています。

FCバスの普及を牽引してきた東京都交通局。そこで都バス各路線の導入や管理を担う横山課長に、FCバスが導入された経緯を伺ってみました。
横山さん「私たち東京都交通局が、FCバスの導入検討を進め始めたのが2015年でした。まずは実証運行を実施し、2017年の春に営業運行を開始しました。基本的にバスの主流は当時も今もディーゼルエンジン車です。ディーゼル車は、段階的に強化されていった排ガス規制に対応しながら、その環境性能を日進月歩で進化させてきましたが、いつしか環境配慮型の車両としてEVやFCVといった燃料電池車も選択肢に挙がってきました。なかでもFCバスは走行時に排出するのは水だけ。水素を燃料として走る新しい技術車両ということで、私たちも大きな関心を持ってこのプロジェクトに携わってきたんですよ」



また、車両のZEV(Zero Emission Vehicle)化を推進されている石田課長にも、往時から現在に至った道のりを振り返っていただきました。

石田さん「2050年のCO2排出実質ゼロに貢献するため、東京都は〝ゼロエミッション東京〟の実現を掲げています。そのためには安全性や快適性を維持しながら、環境性能に優れたバスの運行が不可欠です。路線バスには、ハイブリッド、EV、水素、そこに既存のクリーンディーゼルも加えると、多種多様なエネルギー媒体があります。それぞれに持ち味や優位性があり、それらを活かした路線での走行を続けている段階です」
現状把握と課題の整理
そして、その解決に向けて
FCバスの導入からおよそ10年。運用を続けてきたなかでさまざまなことが見えてきました。
横山さん「FCバスもEVバスも動力源は電気。モーターで駆動します。ドライバーがどんなに配慮していても、ディーゼル車は変速時に揺れを生じさせます。その点、燃料電池車は乗り味がよく、静粛性に優れ、加速性能も滑らか。ドライバーからの評判もよく、とても走りやすいという声が届いていますよ」


石田さん「EVバスは、その強みに電力補充の手軽さがありますが、現状は充電に4時間程度を要するため、運用上の計画調整が必要となります。一般的にEVバスの航続距離は約100kmとされるのに対し、FCバスは1回の水素充填で200km以上の走行が可能。さらに燃料補給時間を15分程度に短縮できる点が特長です。航続距離が長いFCバスは、路線バスとしてより実用的な運用を可能にしてくれます」
さらに、都バスを日常生活の移動手段として使う利用客からの反応も上々な様子。FUEL CELL BUSの文字が誇らしげに描かれたバスに、都民の皆さんは先進的なイメージを持たれているようです。

石田さん「FCバスはEVバスに比べて走行距離が長く取れるものの、燃料となる水素の補給拠点数の課題もあります」
現在、東京都交通局で保有される87両のFCバスは、深川、江戸川、品川、有明、臨海、港南の6つの営業所と支所に分散配置されています。都内に整備されている水素ステーションの多くは湾岸部に立地していて、営業拠点を2か所ずつのエリアに分け、それぞれのエリアごとに近隣のステーションで水素を充填する体制が敷かれているといいます。
横山さん「ただし、メインステーションが定期点検などで休業している期間もありますよね。その場合は、他のエリアの民間ステーションまでバスを回送します。さまざまな場面を想定し、複層的に効率よく充填できるオペレーション体制を整える努力を続けています」
このことは今後、稼働台数の拡大とともに、新たな対応が求められるとおふたりは語ります。しかし、東京都交通局はこうした諸問題を見据え、すでにその解決に意を注いできました。


横山さん「2025年4月、私どもの有明営業所の敷地内に岩谷コスモ水素ステーション有明自動車営業所が新設されました。この施設は公募によって事業者が選定され、バスの営業所内に設けられた初めての水素ステーションです。営業所の目の前にステーションがあると利便性は格段に向上します。これまで、外部にある水素ステーションを利用するためにかかっていた時間が短縮され、人員負担の軽減につながっています」
石田さん「岩谷コスモ水素ステーション合同会社が運営される有明営業所の水素ステーションは、極めて能力が高く、私どもから見ても素晴らしい充填拠点だといえます。私たちはこれまでもFCバスの台数を増やしてまいりましたが、独自の経営計画にも挙げているように、2027年までの今後3年間で累計台数を100両までに引き上げていく予定です。充填拠点が続々と誕生していけば、導入計画はますます前進、加速していくと考えています」
インフラ整備に加え、
技術革新や車両性能の進化にも期待
営業所内に燃料となる水素を補給できる施設があれば、安心感が違います。また、有明営業所の水素ステーションは、需要と供給がマッチングした成功事例といえます。


横山さん「水素ステーションの整備・拡充にも期待したいところですが、私たちはFCバスそのものの技術的進化にも注目しています。現在、都バスに採用しているFCバスはトヨタ製のSORA。実は、バスにおけるFCVはこの1車種しかないんです。そして、そのSORAも今年度で販売終了が決定しています。来年度からは新型車がお目見えするとのことですので、機能性の高まりに期待したいですね」


石田さん「私たち交通局も東京都の一員として小池百合子都知事が掲げる〝世界に誇る、水素社会・東京〟の実現に寄与していきたいと考えています。水素は目に見えるものではありません。しかし、それを動力源として走るバスの活躍の場が増えていけば、より身近な存在になっていくのではないでしょうか。そうすれば民間のバスやトラックへの更なる波及も望めます」
商用モビリティを軸とした水素の社会実装モデル構築において、公共交通機関として大きな役割を果たし続けている東京都交通局。その取組の数々には各方面から熱い視線が注がれています。
企業プロフィール
- 会社名
- 東京都交通局
- 所在地
- 東京都新宿区西新宿2-8-1 東京都庁第2本庁舎
有明自動車営業所:東京都江東区有明3-9-25 - 事業内容
- 都営バス、都営地下鉄などの公共交通機関の運営
- 従業員数
- 6,399名(2025年3月時点)
- 取材撮影
- 2026年2月